日本に現代中医学が導入され半世紀以上が立ちます。私とて、父を師と仰いで研鑽した臨床を携え来日して30年に越え、時の経つのは早いものです。

 その間、より良い治療法を求めてのひとり旅のような日々を送りました。思い起こせば、一回で直せるように、鍼一本で効くように、少なくとも数回の治療で効果を出すべきという命題を自分自身に課し、中医基礎理論を土台に置きながら、折々に古典に触れ、文献を漁り試行錯誤の連続であった気がします。幸いにも昨今では経絡や経穴ひとつひとつの意味がより深く理解できるようになり、治療効果も格段に上がってきております。

 私は中国に育ちながら鍼灸を学び、日本で成長し、耳順(論語より・60歳)を超えた今、次のステージとして、その成果を後進の成長に還元すべく、このため会を立ち上げることになりました。同志の先生方の協力を仰ぎ、より学びやすい会にしていきたいと考えています。そして社会貢献や健康商品開発も視野に入れつつも最も大事にすることは鍼灸学のより良い治療効果や鍼灸の発展です。

 理と術を両輪としながら、皆様と納得できる鍼灸術、時代に適応した鍼灸術、医療の一端を担える鍼灸学を作っていく所存です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

  日本中医鍼灸研究会 会長  賀 偉